特別寄稿 科学技術の発達がもたらした健康問題 筑波大学名誉教授・国際食品機能学会会長 細川 淳一


食環境の変化が健康を蝕んでいる
近年における生活環境の大きな変化と、それに伴う食生活の欧米化の波は、日本人の食生活ひいては食文化の様相をも大きく変えて来ている。

例えばハンバーガー、アルカリ食品、スナック菓子、更には各種のインスタント食品等の高カロリー、高脂質の食物摂取が栄養のアンバランスを生じ、様々な健康上の問題をもたらすようになって来ているが、加えて運動不足、厳しい管理社会の下での様々なストレス等と相まっていわゆる生活習慣病の多発化も懸念されるようになって来ている。日本では40歳以上の男性2人に1人が、女性では5人に1人が高血圧や肥満、高コレステロール等の症状を呈し、メタボリック症候群を強く疑わせる人々が1070万人、その予備群は940万人にも及ぶと推定されている。

更に憂うべくは、これらの生活習慣病の低年齢化現状すら見られるようになり、子供達の心身の健康が危ぶまれるようにすらなって来ているのである。

これらの現象は、人々を取り巻く生活環境や食環境、更には運動不足等に深く関係していることは明らかであり、早急な対応が必要であることを示唆しているものである。     
 
 
人工環境の創出は健康の様相を大きく変えた
私達は大自然からの豊かな恵みと生命エネルギーを取り込みながら生活を営んでいるが、この自然環境の厳しさは、時として様々な問題や試練をもたらす事は良く知られているところである。

天災、気候、洪水、台風、雪害、飢饉、更には近年における温暖化現象等々・・・。かかる状況の中で人類の叡智は自然環境の厳しさを克服し、より生命活動を有利にすべく様々な人工環境を創出することに成功した。 例えば、人力から石炭、石油、電気、原子力エネルギーへと、農薬や殺虫剤、冷暖房施設、交通機関、巨大建築物、バイオ食品、バイオ新作物、食品添加物、各種の化学合成医薬品と総て人工環境といってよいだろう。

これらによって、一見人類は何一つ不自由の無い豊かな生活が保証されているかに見えるが、実は環境を汚染し、破壊し、果ては人々の健康はもとより生命の尊厳性にも重大な影響を及ぼすなど、人工環境のもたらしたマイナス面は、プラス面に比して計り知れないものが見られている。

これでは大自然からのエネルギーを取り込むどころか、人工環境が人々の健康の脅威となり兼ねない現状を、厳しく見つめ早急な対応を図らなければならない。  
 
 
自然治癒力を高め健康な身体を作ろう
科学技術の発達と医療技術の目覚しい発展により人々を取り巻く疾病構造も大きく変化して来ているが、これには様々な医薬品が疾病の予防と治療に大きな役割を果たしていることは云うまでもない。

しかし、近年では特に化学合成医薬品等による副作用やアレルギー反応等が続発するなどの問題も指摘されているが、実はこれも一因となって自然治癒力の低下を招き、病気にかかりやすい状態を作り出しているようにも思われる。かかる状況の中で近年では自然食品の持つ驚くべきパワーと安全性に注目される様になって来ているが、健康食品の売れ行き向上もその一因であるかも知れない。

自然治癒力を高めるためには食習慣を整え、適度な運動と睡眠を習慣づけ、精神的にも安定を図りながら自己の健康管理に努めることが何よりも大切なことである。

自然治癒力を高め、免疫機能の向上を図り病気から身を守ることの重要性を常に念頭に置いて健康管理を実践したいものである。